まちをつなぐ解体工事のお話し
解体工事において、近隣住民の皆様とのトラブルを避けるために最も重要な要素の一つが「養生(ようじょう)」です。株式会社名古屋ナカテックでは、この養生を単なる法令遵守の作業ではなく、地域社会との信頼関係を築く重要な工程として位置づけています。
今回は、解体工事における養生の役割と、具体的な騒音・粉塵対策について詳しく解説いたします。
養生とは、工事現場の周囲をシートや仮囲いで覆い、作業中に発生する騒音、粉塵、飛散物などから外部環境や近隣住民を守るための対策です。建設業界では「防護設備」とも呼ばれ、安全管理の基本中の基本とされています。
私たちナカテックでは、養生を「近隣の皆様への最初のご挨拶」と考えています。工事が始まる前に、しっかりとした準備をして皆様にご迷惑をおかけしないという姿勢を、物理的な形で表現するものなのです。
養生には大きく分けて3つの役割があります。
まず第一に「安全確保」です。解体工事中には、コンクリート片や木材などの破片が飛散するリスクがあります。特に学校や住宅街に近い現場では、通行する子どもたちや歩行者の安全を守ることが最優先となります。
第二に「環境保護」があります。粉塵や騒音を外部に漏らさないことで、近隣住民の生活環境を守ります。洗濯物に粉塵が付着したり、騒音で睡眠を妨げたりすることを防ぐ重要な役割です。
第三に「法令遵守」としての意味があります。建設業法や労働安全衛生法など、関連する法律で養生の設置が義務付けられているケースが多く、適切な養生は法的責任を果たすことにもつながります。
先日、名古屋市内の住宅街で行った解体工事では、隣接する小学校の通学路を考慮して、通常より高さを1メートル増した3メートルの仮囲いを設置しました。
さらに、朝の通学時間帯(7時30分から8時30分)と下校時間帯(15時から16時)には、大型重機の作業を一時停止する配慮も行いました。この結果、工事期間中に近隣からのクレームは一件もなく、逆に「丁寧な工事をしてくれてありがとう」とお礼の言葉をいただくこともありました。
このような経験から、養生は単なる物理的な遮蔽物ではなく、地域社会との信頼関係を築くためのコミュニケーションツールでもあることを実感しています。
解体工事では様々な種類の騒音が発生します。重機のエンジン音、コンクリートを破砕するハンマーの音、鉄筋を切断する音、瓦礫を運搬車両に積み込む音など、その種類は多岐にわたります。
これらの騒音は、周波数や音圧レベルが異なるため、それぞれに適した対策が必要です。低周波の重機音は遠くまで伝わりやすく、高周波の金属音は近隣住民の不快感を招きやすいという特徴があります。
法律では、建設工事における騒音基準を定めており、住宅地域では昼間85デシベル以下に抑えることが求められています。これは電車が通過する際の騒音レベルに相当し、決して小さな音ではありません。
騒音対策の核となるのが防音シートの選定です。一般的な養生シートでも一定の防音効果はありますが、本格的な騒音対策には専用の防音シートが必要です。
防音シートには、厚さ0.5ミリから3ミリまで様々な種類があり、厚いものほど防音効果は高くなります。しかし、重量も増すため、設置方法や支柱の強度計算も重要になってきます。
私たちが最近採用している「二重防音システム」では、内側に厚手の防音シート、外側に軽量の養生シートを設置します。この方法により、騒音を約15デシベル削減することができ、体感的には騒音が半分程度に軽減されます。
設置の際には、シート同士の接続部分に隙間ができないよう、重ね合わせ部分を十分に確保します。わずか数センチの隙間からでも騒音は漏れ出すため、テープによる目張りも欠かせません。
防音シートだけでは完全に騒音をゼロにすることはできません。そこで重要になるのが、作業時間の管理です。
例えば、住宅街での解体工事では、朝8時から夕方6時までの作業時間内でも、特に配慮が必要な時間帯があります。昼食時間の12時から13時、子どもたちの昼寝時間である14時から15時などです。
ある現場では、隣接するお宅に生後6ヶ月の赤ちゃんがいることが分かりました。事前のご挨拶で昼寝の時間を伺い、その時間帯には騒音の大きい重機作業を避け、手作業での片付けに切り替えました。
このような柔軟な対応により、工事期間中も赤ちゃんの生活リズムを崩すことなく、お母様からも感謝の言葉をいただきました。技術的な対策と人的な配慮を組み合わせることで、より効果的な騒音対策が実現できるのです。
騒音対策において見落とされがちですが、極めて重要なのが事前のコミュニケーションです。工事開始の1週間前には必ず近隣住民の皆様を訪問し、工事の概要と騒音対策について丁寧に説明します。
この際、単に「ご迷惑をおかけします」と謝罪するだけでなく、具体的な対策内容を説明することが大切です。「防音シートを二重に設置します」「大きな音の出る作業は午前中に集中させます」など、具体的な配慮内容をお伝えすることで、住民の皆様にも安心していただけます。
また、緊急連絡先を記載した工事看板を見やすい場所に設置し、何かお気づきの点があればいつでもご連絡いただけるよう配慮しています。この「いつでも相談できる」という安心感が、近隣との良好な関係維持につながっています。
解体工事では、建物の構造材や仕上げ材を破砕する過程で大量の粉塵が発生します。コンクリート粉塵、木材粉塵、断熱材由来の繊維状粉塵など、その組成は建物の築年数や構造によって大きく異なります。
特に注意が必要なのは、築年数の古い建物に含まれる可能性があるアスベスト(石綿)です。アスベストは肺がんや中皮腫の原因となる有害物質で、飛散防止のための特別な対策が必要です。事前調査でアスベストの有無を確認し、含有が判明した場合は専門業者による除去作業を優先します。
一般的なコンクリート粉塵であっても、長時間吸入すると呼吸器系に悪影響を与える可能性があります。また、細かい粉塵は風に乗って数百メートル先まで運ばれることもあり、洗濯物や自動車への付着など、生活面での被害も懸念されます。
粉塵対策の基本は「発生源での封じ込め」です。私たちが実践している多重養生システムでは、解体する建物全体を二重のシートで包み込みます。
内側のシートは目の細かいメッシュタイプを使用し、微細な粉塵もキャッチできるようにします。外側のシートは風や雨に強い厚手のビニールシートを使用し、全体の気密性を高めます。
シートの接続部分には特に注意を払い、専用の気密テープで完全に密閉します。わずかな隙間からでも粉塵は漏れ出すため、設置後には煙を使った気密テストも実施します。
さらに、シート内部には負圧装置を設置し、内部の空気を強制的に排出します。排出される空気は高性能フィルターを通すことで、粉塵を除去してから外部に放出します。この仕組みにより、粉塵の外部流出をほぼ完全に防ぐことができます。
粉塵対策のもう一つの重要な要素が散水による湿度管理です。乾燥した状態で建材を破砕すると大量の粉塵が舞い上がりますが、適度に湿らせることで粉塵の発生を大幅に抑制できます。
現場には常時散水できるシステムを設置し、解体作業と連動して自動的に散水を行います。重機のハンマーが構造物を破砕する瞬間に合わせて散水することで、粉塵の発生そのものを防ぎます。
ただし、過度の散水は作業効率の低下や周辺への水の流出を招くため、適切な水量調整が必要です。天候や風向き、作業内容に応じて散水量を細かく調整し、最適な湿度環境を維持します。
また、散水に使用する水には、粉塵の沈降効果を高める界面活性剤を添加することもあります。この添加剤は環境に無害なもので、粉塵をより効率的に地面に沈降させる効果があります。
粉塵対策の効果を客観的に評価するため、工事期間中は継続的な環境モニタリングを実施します。現場の風上と風下に粉塵測定器を設置し、リアルタイムで粉塵濃度を監視します。
測定データは1時間ごとに記録され、基準値を超えた場合は直ちに作業を中断し、対策の見直しを行います。このデータは近隣住民の皆様にも公開し、透明性のある工事運営を心がけています。
ある現場では、風向きの変化により一時的に粉塵濃度が上昇したことがありました。すぐに作業を中断し、風上側の養生を強化することで、30分以内に正常レベルまで改善できました。このような迅速な対応により、近隣への影響を最小限に抑えることができます。
解体工事現場は、様々な危険要素が存在する場所です。高所からの落下物、重機の転倒、有害物質の漏洩など、一歩間違えば重大な事故につながるリスクが常に存在します。
養生は、これらのリスクから第三者を守る物理的なバリアとしての役割を果たします。特に学校や病院、住宅街に隣接する現場では、この役割がより重要になります。
実際の事例として、小学校に隣接した現場での工事中、強風により瓦が飛散したことがありました。しかし、事前に設置していた高さ4メートルの養生ネットにより、瓦は学校側に飛散することなく安全に捕捉されました。もしこの養生がなければ、校庭で遊んでいた子どもたちに重大な危険が及んでいた可能性があります。
このように、養生は「もしもの時」の最後の砦としても機能するのです。予想外の事態が発生した際にも、被害を最小限に抑える重要な役割を果たしています。
養生のもう一つの重要な機能が、危険区域の明確化です。色鮮やかな養生シートや立入禁止の看板により、一般の方々に「ここは危険な場所である」ことを視覚的に伝えます。
特に好奇心旺盛な子どもたちにとって、工事現場は興味深い場所に映ることがあります。しかし、適切な養生により物理的・心理的なバリアを設けることで、安易な立ち入りを防ぐことができます。
養生の色彩選択にも配慮しており、遠くからでも認識しやすいオレンジや黄色を基調とした養生材を使用しています。これらの色は、人間の視覚に「注意」や「警戒」の心理的効果をもたらすことが知られています。
また、夜間や早朝の視認性を高めるため、反射材を組み込んだ養生材も使用します。街灯の少ない住宅街でも、車のヘッドライトに反射して工事現場の存在を明確に示すことができます。
養生は外部への配慮だけでなく、内部で働く作業員の安全確保にも貢献します。風よけとしての機能により、高所作業時の安全性が向上し、粉塵の飛散を抑えることで作業環境も改善されます。
適切な養生により作業現場が外部から遮断されることで、作業員は集中して作業に取り組むことができます。通行人の視線を気にすることなく、安全第一での作業が可能になります。
さらに、養生内部の環境が安定することで、精密な作業も可能になります。例えば、有害物質の除去作業や、再利用可能な部材の慎重な取り外し作業など、高い技術力が要求される工程でも、安定した作業環境により品質の向上が図れます。
私たちの現場では、「安全第一、品質第二、効率第三」の順序を徹底しています。適切な養生により安全が確保されて初めて、高品質で効率的な工事が実現できるのです。
近年、環境意識の高まりとともに、解体工事においても廃棄物の削減とリサイクルの推進が重要な課題となっています。私たちナカテックでも、2025年8月よりリユース・リサイクル事業を本格的に開始しました。
この取り組みを成功させるためには、解体時に発生する材料の品質を可能な限り維持することが重要です。ここでも養生が重要な役割を果たします。
例えば、木材の梁や柱を再利用するためには、解体時に損傷を最小限に抑える必要があります。適切な養生により粉塵の付着を防ぎ、雨水による劣化を防ぐことで、リユース可能な状態で材料を回収することができます。
また、瓦や石材など、外観が重要な材料については、養生による保護がさらに重要になります。これらの材料は、美観を損なうことなく次の建物に再利用されることで、文化的価値の継承にも貢献できるのです。
適切な養生により作業環境が整備されることで、解体材料の分別作業も効率的に行うことができます。粉塵や雨水の影響を受けない環境で、材質ごとの正確な分別が可能になります。
木材、金属、コンクリート、プラスチックなど、材質の異なる廃材を正確に分別することで、リサイクル率の向上が図れます。混在した廃材は処理コストが高く、最終的に埋立処分される可能性も高くなります。
私たちの現場では、養生内部に材質別の仮置き場を設け、解体と同時進行で分別を行います。この方法により、分別精度の向上と作業効率の向上を両立させています。
特に、古い住宅から出る古材については、骨董的価値のあるものも含まれます。これらの材料を適切に保護し、専門家による鑑定を経て、適切な再利用先に橋渡しすることも私たちの重要な使命です。
リユース・リサイクル事業の成功には、地域社会との連携が不可欠です。養生により近隣への迷惑を最小限に抑えることで、地域住民の皆様からの理解と協力を得ることができます。
実際に、ある現場では解体により出た庭石や植木を、近隣の住民の方に無料で提供しました。事前の丁寧な養生と騒音対策により良好な関係を築いていたからこそ実現できた取り組みです。
このような地域密着型のリサイクル活動は、廃棄物の削減だけでなく、地域コミュニティの活性化にも貢献します。解体工事が地域社会にとって迷惑な存在から、有益な存在へと変わる可能性を秘めています。
私たちは今後も、適切な養生による近隣配慮を基盤として、持続可能な解体工事とリサイクル事業を推進してまいります。地域社会と環境の両方に配慮した「未来ある解体」を目指し、次世代により良い環境を残していきたいと考えています。
解体工事における養生は、単なる法令遵守や安全対策を超えた、深い意味を持つ重要な工程です。騒音や粉塵から近隣を守る物理的な機能だけでなく、地域社会との信頼関係を築く第一歩としての役割も担っています。
私たち株式会社名古屋ナカテックは、「想いを残し、次世代につなぐ」という理念のもと、養生を含むあらゆる準備を「きっちりと」行うことをお約束いたします。丁寧な事前準備により、依頼主の皆様には安心を、近隣住民の皆様には快適な生活環境を、そして次に土地を使われる方には気持ちよくご利用いただける環境を提供します。
解体工事に関するご相談は、いつでも無料で承っております。養生計画や安全対策について詳しく知りたい方、リユース・リサイクルについてお聞きになりたい方も、お気軽にお問い合わせください。
私たちナカテックが、あなたの大切な想いとともに、安全で環境に配慮した「新しい創造のはじまり」をサポートいたします。
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