まちをつなぐ解体工事のお話し
解体工事と聞くと、どんなイメージを持たれますか?大きな重機が建物を壊していく迫力のある現場を想像される方も多いでしょう。しかし、実際の解体工事は想像以上に繊細で、高度な安全管理が求められる作業なのです。
私たち株式会社名古屋ナカテックでは、「想いを残し、次世代につなぐ」という理念のもと、単なる建物の撤去ではなく「新しい創造のはじまり」として解体工事に取り組んでいます。
解体工事における事故は、作業員だけでなく、依頼主様や近隣住民の方々にも深刻な影響を与えてしまいます。だからこそ、私たちは日々の安全確認を徹底し、事故ゼロへの挑戦を続けているのです。
実際に、当社は2025年9月5日に「2025年度優良工事等表彰」を受賞いたしました。これは国が認める厳しい基準をクリアした証拠であり、私たちの安全管理体制が評価された結果です。
本記事では、解体工事のプロである私たちが実際にどのような安全管理を行っているのか、具体的な手法と考え方をわかりやすく解説いたします。これから解体工事をお考えの方、また安全管理に関心のある方にとって、参考になる内容をお届けします。
解体工事は新築工事とは全く異なる性質を持っています。新築では設計図どおりに建てていけばよいのですが、解体では既存の建物の状態を正確に把握しながら、安全に取り壊していく必要があります。
特に古い建物の場合、建築当時の図面が残っていないことも多く、「見えない部分」に予想外の構造や埋設物が隠れていることがあります。
例えば、先日担当させていただいた築50年の住宅解体では、事前調査で発見されなかった地下の古い浄化槽が見つかりました。もし事前の試掘調査を怠っていれば、重機が突然地盤沈下を起こし、重大な事故につながる可能性がありました。
解体工事では、騒音や振動、粉塵の発生が避けられません。特に住宅密集地や通学路の近くでは、細心の注意が必要です。
私たちが手掛けた名古屋市内の住宅解体では、すぐ隣が通学路になっていました。この現場では、子どもたちの登下校時間(午前7時30分〜8時30分、午後2時30分〜4時)は重機の稼働を完全に停止し、手作業での解体作業に切り替えました。
このような配慮は、依頼主様が近隣トラブルに巻き込まれることを防ぎ、安心して解体工事を任せていただくために欠かせません。
解体工事業者には、建設業法や廃棄物処理法など、多くの法的規制が課せられています。これらの法令を遵守することはもちろん、それ以上に社会的責任を果たすことが求められます。
当社の「優良工事等表彰」受賞も、こうした法令遵守と品質管理、安全管理が総合的に評価された結果です。単に事故を起こさないだけでなく、環境への配慮、近隣住民への配慮、適正な廃棄物処理など、多角的な観点から優良と認められました。
安全な解体工事は、工事が始まる前の準備段階で決まると言っても過言ではありません。私たちが最も重視しているのが、現場の詳細な調査です。
建物の構造調査では、図面だけでは分からない実際の構造を把握します。特に重要なのが、建物を支えている梁や柱の配置です。これを間違えると、解体中に建物が予期しない方向に倒壊する危険があります。
また、アスベスト(石綿)の調査も必須です。昭和50年以前に建てられた建物には、アスベストを含む建材が使用されている可能性が高く、適切な処理を行わないと作業員や近隣住民の健康に深刻な影響を与えてしまいます。
地中に何が埋まっているかは、地表からでは判断できません。そこで欠かせないのが試掘調査です。
試掘調査とは、実際に地面を掘って、地中の状況を確認する調査のことです。古い浄化槽、井戸、地下室、廃棄物、さらには戦時中の防空壕などが発見されることもあります。
ある現場では、試掘調査により地下1.5メートルの位置に大きなコンクリート塊が埋まっていることが判明しました。これを知らずに重機で掘削していれば、重機の転倒や地盤の急激な沈下が起こり、重大事故につながっていたかもしれません。
試掘調査は手間とコストがかかりますが、安全確保のためには絶対に省略できない工程なのです。
現場周辺の環境調査も重要な準備作業です。人通りの多い時間帯、近隣の建物との距離、電線や配管の位置など、あらゆる情報を収集します。
学校や病院、保育園が近くにある場合は、特別な配慮が必要です。騒音の大きい作業は時間帯を制限し、粉塵の飛散を防ぐために通常以上に厳重な養生を行います。
また、狭い道路に面した現場では、重機や廃材運搬車両の通行ルートを慎重に検討し、近隣の交通に与える影響を最小限に抑える計画を立てます。
毎日の作業は朝礼から始まります。朝礼では、その日の作業内容の確認、天気予報のチェック、作業員の体調確認などを行います。
特に重要なのがKY活動(危険予知活動)です。KYとは「K=危険」「Y=予知」の略で、作業開始前に現場にどのような危険が潜んでいるかを皆で話し合い、対策を決める活動です。
例えば、「今日は風が強いので、高所作業時は安全帯を二重に装着する」「昨日の雨で足場が滑りやすくなっているので、滑り止めマットを追加配置する」といった具体的な対策を決めていきます。
解体現場で使用する重機は、毎日の点検が法律で義務付けられています。当社では法定点検項目に加えて、独自のチェック項目も設定しています。
エンジンオイルや燃料の量、油圧ホースの亀裂や漏れ、キャタピラの損傷、アタッチメント(ブレーカーやカッターなど)の装着状態などを詳細にチェックします。
特にアタッチメントの点検は重要です。ブレーカーが作業中に外れて落下すれば、作業員の生命に関わる重大事故につながります。装着ピンの状態、油圧配管の接続状況などを必ず確認します。
点検で異常が発見された場合は、修理が完了するまで絶対に作業を開始しません。「少しぐらい大丈夫」という判断が、取り返しのつかない事故を招くのです。
重機の点検と並行して、現場全体の安全状態も確認します。
仮囲いや養生シートに破損がないか、第三者の立ち入りを防ぐ施錠が確実にされているか、警告看板が適切に設置されているかなどをチェックします。
また、前日の作業で発生した廃材が安全に集積されているか、通路が確保されているかも重要な確認項目です。現場が散らかっていると、作業員の転倒事故や廃材の落下事故の原因となります。
重機作業では、オペレーター(運転者)と誘導員の連携が事故防止の鍵を握ります。重機には死角が多く、オペレーター一人では周囲の安全を完全に確認することはできません。
誘導員は重機の周囲を常に監視し、人や障害物がないことを確認してから作業の指示を出します。特に重機の後退時や旋回時は、事故が起こりやすいため、誘導員は決められた位置に立ち、明確な手信号で指示を送ります。
当社では、オペレーターと誘導員の間で無線通信も併用しています。騒音の大きい現場では手信号が見えにくくなることがあるため、音声による確実な意思疎通を図っています。
重機が作業する際は、その動作範囲を「作業半径」と呼びます。この作業半径内は絶対に人が立ち入ってはいけない危険区域です。
作業半径は重機の種類や作業内容によって異なりますが、一般的には重機を中心とした半径10〜15メートル程度の範囲を立ち入り禁止とします。この範囲にはコーンやロープで明確に境界線を設け、「立ち入り禁止」の表示を行います。
実際の作業中も、誘導員がこの境界を監視し、他の作業員が誤って立ち入らないよう注意を払います。
天候は重機作業の安全性に大きく影響します。当社では、以下の条件では重機作業を中止または制限します。
強風時(風速10メートル/秒以上)は、高所での作業や軽量な廃材の移動作業を中止します。強風により廃材が飛散し、周囲に危険を及ぼす可能性があるためです。
雨天時は、足場や操作レバーが滑りやすくなるため、通常以上に慎重な作業を心がけます。また、視界不良による事故を防ぐため、必要に応じて作業を一時中断します。
住宅地での解体工事では、近隣住民の生活への配慮が欠かせません。当社では、以下の時間帯は騒音の大きい作業を制限しています。
・午前8時前、午後6時以降は重機作業を行わない ・正午から午後1時の昼休み時間は騒音作業を控える ・土日祝日の作業は事前に近隣へ相談し、了解を得た場合のみ実施
特に通学路や学校の近くでは、子どもたちの通学時間に合わせてより厳しい制限を設けています。朝の登校時間(7時30分〜8時30分)と下校時間(午後2時30分〜4時)は、安全確保のため重機を一時停止し、手作業での軽微な作業のみに切り替えます。
騒音対策として、現場全体を防音シートで囲う「防音養生」を実施します。これにより、騒音を5〜10デシベル程度軽減できます。
また、粉塵の飛散を防ぐため、解体作業中は散水を継続的に行います。特に風の強い日は、通常以上に頻繁な散水を実施し、粉塵が近隣に飛散しないよう注意を払います。
建物の解体時は、外側から内側に向かって段階的に解体を進める「内部解体工法」を採用し、急激な倒壊による大きな振動や騒音を防いでいます。
工事前の近隣挨拶では、工事期間、作業時間、緊急連絡先などを記載した案内書を配布します。また、工事中も定期的に近隣を訪問し、何かご不便をおかけしていないか確認します。
万が一、騒音や振動についてご相談をいただいた場合は、速やかに現場責任者が対応し、必要に応じて作業方法の変更や時間調整を行います。このような迅速な対応により、大きなトラブルに発展することを防いでいます。
解体工事で発生する廃材は、法律に従って適切に分別・処理する必要があります。木材、コンクリート、金属、プラスチック、石膏ボードなど、材質ごとに分別し、それぞれ認可を受けた処理業者に委託します。
不適切な廃材処理は、環境汚染や不法投棄といった社会問題を引き起こします。また、処理業者が不法投棄を行った場合、元請けである解体業者も責任を問われる可能性があります。
当社では、マニフェスト(産業廃棄物管理票)による厳格な管理を行い、廃材が最終的にどこで、どのように処理されたかを必ず確認しています。
近年、環境意識の高まりとともに、解体工事でもリユース・リサイクルの重要性が増しています。当社では「解体で出た不用品を無料で再利用へ」提供する取り組みを開始しました。
まだ使える建具、設備機器、庭石などは、必要とされる方に無償で提供しています。これにより、廃棄物の削減と資源の有効活用を同時に実現しています。
リユース品の取り出し作業では、傷をつけないよう通常以上に丁寧な作業が求められます。作業員には特別な研修を実施し、安全かつ丁寧な取り扱い方法を習得してもらっています。
昭和50年以前に建築された建物には、アスベスト(石綿)を含む建材が使用されている可能性があります。アスベストは発がん性物質であり、適切な処理を行わないと深刻な健康被害を引き起こします。
当社では、解体前に必ず専門機関によるアスベスト調査を実施します。アスベストが発見された場合は、都道府県への届出、専用の防護服着用、密閉空間での除去作業、廃材の特別管理など、法令に従った厳格な処理を行います。
アスベスト除去作業では、作業員の安全確保はもちろん、飛散防止のため現場を完全に密閉し、専用の集塵装置を設置します。
万が一事故が発生した場合に備え、緊急時の連絡体制を整備しています。現場責任者、会社本部、関係機関への連絡順序と方法を明確に定め、全作業員に周知しています。
軽微な怪我であっても、必ず現場責任者に報告し、必要に応じて医療機関での受診を行います。また、事故の状況を詳細に記録し、再発防止策の検討に活用します。
重大事故の場合は、直ちに作業を中止し、救急車の要請、警察・消防への通報、労働基準監督署への報告を行います。同時に、二次災害を防ぐため現場の安全確保を最優先に実施します。
当社では、万が一の事故に備えて各種保険に加入しています。労災保険はもちろん、第三者への損害を補償する賠償責任保険、施設所有者としての責任を補償する施設賠償責任保険など、包括的な保険体制を整えています。
これらの保険により、作業員、依頼主様、近隣住民の皆様に万が一の際も適切な補償を提供できる体制を構築しています。
事故やヒヤリハット(事故には至らなかったが危険を感じた事例)が発生した場合は、詳細な分析を行います。事故の原因、発生状況、被害状況などを記録し、同様の事故を防ぐための対策を検討します。
分析結果は社内で共有し、作業手順の見直しや追加の安全教育に活用します。小さなヒヤリハットから学ぶことで、重大事故を未然に防ぐことができるのです。
解体工事における安全管理は、単に事故を防ぐだけでなく、依頼主様、近隣住民、作業員、そして社会全体への責任を果たすための基本中の基本です。
当社が「2025年度優良工事等表彰」を受賞できたのも、これまで述べてきた安全管理の取り組みが評価された結果だと考えています。しかし、これに満足することなく、さらなる安全レベルの向上を目指して日々努力を続けています。
「想いを残し、次世代につなぐ」という当社の理念は、安全で丁寧な解体工事を通じて実現されます。建物を単に壊すのではなく、そこに込められた思い出や歴史を大切にしながら、新しい未来への橋渡しをする。それが私たちの使命であり、そのために安全管理は絶対に妥協できない要素なのです。
解体工事をお考えの方は、業者選びの際にぜひ安全管理体制についても確認してください。適切な資格を持っているか、保険に加入しているか、近隣への配慮はどうか、廃材処理は適正に行われるかなど、多角的な視点で検討することをお勧めします。
当社では、解体工事に関するご相談を無料で承っております。安全で丁寧な解体工事をお約束いたしますので、お気軽にお問い合わせください。皆様の大切な建物を、責任を持って、安全に、そして丁寧に解体させていただきます。
私たちは今後も、事故ゼロを目指し、依頼主様に安心をお届けし、次世代に誇れる解体工事を続けてまいります。安全管理こそが、信頼される解体業者への第一歩であることを肝に銘じ、日々の業務に取り組んでいます。
©Nagoya nakatec Co., Ltd.